2016年4月27日水曜日

◆日本語と二人称

◆日本語と二人称
Facebookを使う人にとってこの考え方は違和感があると思うが、日本は本来、名前を呼び合うのは無礼とされていた。日本語には「あなた、きみ、そなた、おまえ」という言葉がある。これらも語源的にいえば「あちらにいる方、たいせつな方、そっちの方にいるひと、目の前にいるひと」というべき言葉で、英語でいうYOUのように、それ自体が二人称の代名詞として存在していたわけではない。
 
日本では古来、名前にはその人の魂が宿っていると考えられていた。それゆえに名前を安易に口にするのは、相手の生命を脅かすものだとさえ思われていた。千と千尋の神隠し、を見たひとはわかるだろう。
 
本名というのはそれほど大事なもので、そうやすやすと人から呼ばれては困るものだった。だからみんな相手の本名などは知っていても言わないのが礼儀。したがって相手を呼ぶ方法が本来なく、仕方がないので「あっちの方のひと」「前にいるひと」という言い方でぼかして二人称的に用いられてきたのだ。
 
ところがそういう言い方も、だんだん直に「相手」を指す言葉だというふうに固定してくると、それもまた使いにくくなる。直接ずばり「あなたはこれ食べますか」みたいな言い方をすると、何となく相手に対して失礼な感じがしないだろうか。
 
今でも親や祖父母、先生、長上に対して「あなたはこれ食べますか」みたいな聞き方はとんでもない無礼だということになる。日本語はこうした無礼を廃するために敬語が発達し、主語の省略がひろくつかわれるようになった。この場合は、「これを召し上がりますか」と言えば良いことになっている。
 
広告の手法で「あなた」と呼びかけるものがあり効果もある。けれど何となく多用するといやな感じがするのは、私たちがまだネイティブの日本人としての言葉と心を無意識下でも受け継いでいるからだと思う。

( °◡°)

0 件のコメント:

コメントを投稿